「鳥喜多」

お腹がすくと、どうしても機嫌が悪くなってしまう。

そんな私を一番、満足させてくれる店は、JR長浜駅から徒歩３分にある

「鳥喜多」だ。

滋賀県でも有数の観光地の長浜には、土日になると多くの観光客が訪れる。

その観光客の中で最も人気の店が「鳥喜多」で、店の前には常に人が並ぶ。多い時には４０人くらい並んでいる日もある。

行列が嫌いな私は、いつも通り平日の昼間に暖簾をくぐった。

２０人ほどしか入らない店内と、テキパキと動き回るパートの熟女たちは親近感を感じさせる。そんな熟女にいつも通り、親子丼とかしわ鍋を注文した。

熟女に渡された水を２杯ほどおかわりした直後、親子丼とかしわ鍋はやってきた。米の上に被った親子からは鳥とだしの良い香りが香ってくる。黄身をレンゲで潰し、一気に掻き込む。熱々のご飯と濃厚で深みを感じるだしのきいた親子が一気に口に広がり、食べるペースがだんだんとあがっていく。３杯目の水を飲み干した頃には親子丼はもう半分になっていた。「待たせたな！」と心の中で叫び、かしわ鍋を睨みつける。鍋専用のレンゲにはおろし生姜が乗せられている。それを鍋の汁の中で溶かし、レンゲで口の中に運ぶ。生姜の効いた汁は水筒に入れて持ち運びたいほど癖になる味で、風邪のひき始めに世界で一番効く食べ物に違いない。親子丼とかしわ鍋をハイペースに交互で食べ進め、７分ほどで完食してしまった。これだけ満足して、英世一人でお釣りがくる。至福の時間を終えたツジは、来週もまた来ることを心に誓い、熟女たちに礼を言い、別れを告げた。